書評　臺佳彦監督

----  特別な作品だった。----

 

読み進みながら、今わたしがいるこの場所が作品の中のハイチと同じ状況だったら、

わたしはどうこたえるのだろうか、あなたがわたしだったら、彼や彼女がわたしだったらとか、常に自分自身の立つ位置を変えながら考えさせられ葛藤し混乱し続けていた。

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ロールプレイングは、自分が主人公になる。

それはあくまでもゲームだが、このストーリーにはリセットもセーブポイントもなく、電源を切ることもできない。ぜったいに切れないのだ。

そして、本当に命がかかっているし、そこにいたことで痛く切なく運命付けられた幾つもの人生が交差していく。

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独裁政権による弾圧が、同一国家内で弾圧する人とされる人という事態を生み、その町その家の中に混在してしまう恐怖とは、いったいどれほどのものなのか。

絶望と恐怖に生かされ、人は優しさだけを救いにし、生き、強くなり、許し、闘い、絶望し未来を見る。

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終わりなき悲劇はわたしたちの無関心から生まれる。だから終わりが見えないのだと思う。

この事実と真実にさわって共に考えることだけが、わたしたちの未来に光を与える。

 

読みながらも読み終わっても、

ハイチのこの出来事の中に一瞬とはいえ立てたわたし自身の優しさや愛が、

とても小さく傲慢なものに思えて、

もっと優しくなりたい、もっと愛したいと、わたしも強く望んでいた。

この作品にさわらせてもらえたことに感謝します。ありがとう。

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臺佳彦 拝